自分がどうやら人よりも脇に汗をかきやすいんだな、というのを自覚したのは社会人になってから。それまでの人生ではまったくそんなことを意識したことはなく、暑い時期は脇汗で少し服が濡れる、というのは普通のことだと思っていましたが、それって決して普通ではなく、むしろ結構レアなんだと気づいたのが社会人になってからなんです。
というのも、社会人となると夏場を迎えても、さすがにTシャツで通勤と言う訳にはいかず、状況によってはスーツの上着も着なくてはならないようなシチュエーションもあります。
そんな、それまでの私服OKだった大学生時代から、生活習慣が大きく変化することで自身の脇汗のことがわかってきたのです。
なにかとやっかいな脇汗に、いかに悩み、どうやって対処してきてどう克服したのか、少しでも参考になればと思います。
目 次
やっかいな汗
暑くもないのになぜか脇の部分が汗でじっとりと濡れて、シミになっている。そんな脇汗に、自分自身も悩みを抱えていました。暑いとか寒いとかに関係なく、緊張しているとかしていないとかも関係なく、なぜんか常に出てくる脇汗、とてもやっかいなものでした。
なにせ、服が濡れてシミになること、濃い色の服の時は特に目立ちます。また、下着なんかは徐々に黄ばんできちゃうこと、一張羅のジャケットなんかもシミが出来ちゃってクリーニングで染み抜きをしてもらわないといけなかったりと、衣服についての悩みも多いんです。
特に、厚着をする冬は問題でした。外を出歩く時は防寒として厚着をするわけですが、ひとたび室内に入るとむしろ暖房が効いていて暑いくらいだったりするともう最悪。暑かったら暑かったで、普通に出てくる脇汗で、もう脇がびっしょりと濡れてしまうのです。季節は冬なのに、服は汗だらけというなんともやるせない状況になるわけです。
また、常に汗で湿潤状態になっているためか、どうしても雑菌が繁殖してにおってきてしまうんです。毎日、お風呂でゴシゴシと洗ってもそれほど効果はなく、何となく常に漂う体臭についての悩みも尽きず…
市販のデオドラント系のスプレーなどもいくつも試してみましたが、どれもこれもほとんど効果なし。効果がないので、その内使わなくなってしまいます。
そういう感じで、まさに百害あって一利なし、なんとかしたいという思いで人生を過ごしてきました。脇汗が気になりだしたのが大学生の頃ですから、もう数十年来の悩みとなっていた訳です。
解決への模索
さて、どう解決するか。いろいろと調べましたが、出てくる出てくる、世の中には同じ悩みを抱えている人が意外にも多いんだということを実感しました。
また、多汗症を調べると必ず出てくるのが「ワキガ」のこと。この2つは似ているようで、少し異なるものであることも分かりました。
いわゆる「多汗症」は、汗腺の内のエクリン汗腺からの発汗が多いことによるもの。一方の「ワキガ」はアポクリン汗腺からの発汗が多いことによるもの、という違いです。アポクリン汗腺からの汗は、その中の脂肪酸が皮膚の表面にいる細菌によって分解されることで臭いを発しますが、エクリン汗腺からの汗はほぼ臭わない、とされているようです。
そして多汗症の治療にも様々な治療法があることがわかりました。簡易なものから、いわゆる手術をおこなうものまで。それぞれの治療法については次章以降を参照してください。
ボトックス注射
軽いものからいくと、まずは「ボトックス注射」。脇の部分に一時的に神経を麻痺させる「ボトックス」という液体を注射することで、汗腺機能を麻痺させて汗を抑える、というもの。
この「ボトックス」という液体。神経麻痺を生じさせるボツリヌス菌が作り出すボツリヌス神経毒素を汗の出る部位に注射して、その部分の神経麻痺によって汗腺機能を麻痺させることで発汗を抑える、というものです。
このボツリヌス神経毒素は、一般的には神経中毒疾患や食中毒を引き起こすものですが、治療で使用されるものは生理食塩水で薄めてあるため、人体にも安全で副作用もほとんどない、ということになっています。
このボトックス注射、効果は長く続かず、注射後から徐々に落ちていき、約半年で効果が切れてしまうため、継続したい場合はまた注射を打たなければなりません。したがって、このボトックス注射で汗を抑えるためには年に2回、ずーっと注射を打ち続けなければならない、ということになります。
1回の治療で打つ注射は、片方の脇で10~20か所。そして、注射を打つ際には脇毛を剃らなければなりません。治療費は2~3万円です。
外科手術
次に考えられるのが「外科手術」です。これは、脇の部分を切開して、汗の発生源であるアポクリン汗腺を除去するというもの。一旦手術をしてしまえば、効果は半永久と言われています。
ただし、以下のようなデメリットもあります。
- そもそも多汗症の原因であるエクリン汗腺は除去できないため、多汗症対策にならない。あくまでも、ワキガ治療。
- 費用が数十万円と高価なこと。
- 手術による傷口が残ること。
- 手術後3~10日程度は、安静にして傷口を保護する必要があるため日常生活に制限があること。
ミラドライ
ミラドライとは、脇にマイクロウエーブを照射して、皮膚の下2~3mmにあるエクリン汗腺およびアポクリン汗腺組織を破壊して、発汗量を少なくする治療法です。このマイクロウェーブは飲食物などを温める電子レンジで使用しているマイクロウエーブと近いもので、水分に反応して熱を発生させるのが特徴です。ミラドライは汗腺内にある水分を利用して熱エネルギーを発生させ、効率よく安全に汗腺を破壊するように開発されている、ということです。そして、破壊された汗腺は元に戻ることはないため、効果は半永久的に続くようです。
ただし、照射されずに残った汗腺からの発汗はある。というようなデメリットもあります。治療費は20万円から40万円程度とです。
私が採用した改善法
いろいろな治療法があることが分かったものの、どの治療法にもメリット、デメリットがあり、中々決められずにいました。一時は、やはりどうせ治療をするなら根本的に治したいと考え、外科手術を真剣に考え、クリニックに行ってまずは相談をしてみようとしました。そこでインターネットの予約サイトを見てみると、なんと直近の2か月くらいは予約が一杯…美容系のクリニックですから、脇汗だけでなく脱毛などいろいろな分野をやっているからなんでしょう。そんなことで、外科手術という選択肢は何となく尻すぼみ状態になり、また時間が過ぎていくことになりました。
ならば、ということで美容系のクリニックではなく、一般の整形外科などで多汗症対策としてボトックス注射を行っている医院でボトックス注射を打つ、という選択肢を考え始めていたとある日、脇汗に効果があるという、あるユーチューブの動画を見ていました。
それは、いわゆるデオドラント系のもので、脇に直接塗るというものでした。ただし、普通のロールオンタイプのものと異なるのは、夜、風呂上がりの肌が清潔な状態で塗り、そのまま就寝する、という塗り方です。そして、最初は「めちゃくちゃ痒い」とのことでした。しかし、「汗がぴたっと止まる」というその言葉に惹かれ、ものは試しと早速購入をしてみることにしました。
その製品は、デンマークで開発された「エティアキシル デトランスα」という製品です。購入したサイトやその他のサイトをいろいろと調べると、確かに最初は「痒い」というのは間違いないらしく、そのためか「普通肌用」に加え「敏感肌用」という痒みが若干抑えられたものもあります。
その中身は何かと言うと「塩化アルミニウム」の水溶液、とのこと。「塩化アルミニウム」がどのように作用して汗が抑えられるのか?以下、ウィキペディア日本語版からの引用です。
塩化アルミニウムが角層内の汗管と結合し、発汗の出口をふさぐことによる制汗作用と考えられている。
「塩化アルミニウム」「フリー百科事典 ウィキペディア日本語版」より 最終更新 3月13日 (土) 14:19
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A1%A9%E5%8C%96%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%9F%E3%83%8B%E3%82%A6%E3%83%A0
「塩化アルミニウム」を肌に塗ると、汗の水分と反応して「水酸化アルミニウム」という物質を生成します。この水酸化アルミニウムが、皮膚の細胞のケラチンと反応して角栓状に変化して汗腺の出口に蓋をすることで発汗を抑える、という仕組みのようです。この「水酸化アルミニウム」を生成する際に微量の塩酸が出来ることが痒みの原因となるようです。
この痒みについては、肌の状態や薬への反応など個人差があるので一概には言えませんが、最初は痒くても徐々に慣れてくるようです。ただ、あまりにも痒すぎるのはいやだし、ユーチューブ動画で「敏感肌用でも充分効果あり」とのことだったので、「敏感肌用」を購入しました。
なお、同じ商品が海外では「パースピレックス」という商品名で販売されていますが、これは同じ商品だそうです。
改善の効果は?
では、早速使ってみましょう、ということで、お風呂上がりの脇にコロコロと塗ってみます。特に臭いもなく、刺激もなく、さらさらとした液体です。しかし、就寝する頃になると何となく脇がむずがゆくなってきました。これなんです、「痒くなる」というのは。確かに痒い、痒いんだけど耐えらえないほどではない、という痒さでしょうか。
最初の内は、2,3日に1回のペースで塗っていきます。すると、たちまち効果が表れていることが実感できたのです。いつもなら、インナーの下着はもちろん、その上に着るシャツ類にも必ず脇汗による汗ジミができていたのが、明らかにその汗ジミがなくなってきたのです。これには正直ちょっと驚きました。
ぱっと見た目は、ドラッグストアで普通に売られているデオドラント系の制汗剤と同じですが、その効果の違いは歴然です。さあ、こうなるともう続けるしかありません。そして、発汗量の減少を見ながら、その後は1週間に1回程度に塗る頻度を少なくしていきましたが、その頃にはほぼ発汗がない状態になりました。
夏場の暑い時期、それでなくても普通に汗をかく時期でも、脇の汗はほぼ完全におさまったのです。これにはもう、正直感動すら覚えました。長年、人知れず悩んできた脇汗の問題が思いがけない形で解消されたのですから。
こうなると、おしゃれなジャケットを羽織ってみようとか、濃い色のシャツを着てみようとか、服を選ぶ選択肢が増えるのもうれしいところです。今までは、汗ジミを気にして、上着類はなるべく脱ぐように気を掛けていたのが、その心配がなくなることの解放感は「うれしい」の一言に尽きます。